
製造業において、部品の精度を正しく評価するうえで欠かせないのが幾何公差の測定です。
今回の記事では、幾何公差の定義や種類をはじめ、測定方法を解説し、併せて弊社で扱っている関連機器を紹介します。
幾何公差の概要や測定方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
幾何公差とは?
幾何公差(きかこうさ)とは、部品の形状や位置、傾きがどの程度まで許容されるかを示す基準のことです。寸法の誤差だけでなく、平面の傾きや穴の位置ずれ、円の正確さなど、三次元的な形状のゆがみを評価するために行われます。
図面上では記号(幾何特性記号)と数値によって記され、製造現場・検査現場では共通の指標となります。幾何公差を適切に設定することで、品質のばらつきを抑え、機械の性能や安全性を維持したまま効率的な加工・検査が可能になります。
精密機械、自動車、航空宇宙、金型など、ミクロン単位の精度が求められる業界では欠かせない概念です。
種類
幾何公差は、大きく以下の4つに分類されます。
形状公差
面や線そのものの形状の正確さを示す公差で、平面度・真円度・円筒度などが該当します。
姿勢公差
基準に対してどの角度・向きにあるべきかを示すもので、平行度・直角度・傾斜度などが含まれます。
位置公差
穴や軸の中心位置など、部品同士の組み合わせ精度を管理する公差。位置度・同軸度・対称度などが代表例です。
振れ公差
回転体の振れ具合を規定する公差で、円振れ・全振れが該当します。モーターやシャフトなどで特に重要になります。
幾何公差の測定方法

幾何公差を正確に評価するためには、適切な測定機器を用いる必要があります。
ここでは、代表的な測定機器とそれぞれの特徴を解説します。
ノギス・マイクロメータ
寸法測定や外径・内径の確認に使用される基本的な測定工具で、簡易的に真直度を測定することもできます。
ハイトゲージ
基準面からの高さ寸法・段差・平行度などを測定する機器です。平面度の確認や位置度の簡易測定にも利用されます。
ダイヤルゲージ(指示計)
わずかな変位を高い精度で読み取れる測定器です。治具と組み合わせれば、振れ測定・直角度チェック・平面度の簡易測定など、多用途に活用できます。
真円度測定機
丸物の真円度・円筒度・同軸度などの測定に特化した専門機器です。回転テーブルと高感度センサにより、μm単位での形状誤差を可視化できます。主にシャフト、ベアリング、丸型精密部品などの評価に用いられます。
画像測定機
非接触で高速かつ高精度の測定が可能な検査機です。寸法測定だけでなく、幾何公差にも対応でき、置くだけで自動測定できるのが大きな特徴です。
輪郭形状測定機
断面形状や角度、曲線の幾何形状などの精密測定ができる機器です。段差や溝形状、テーパ角、複雑なカーブの公差評価に有効で、切削・プレス・金型部品などで広く用いられています。
三次元測定機(CMM)
X・Y・Zの3軸方向にプローブを移動させて測定し、立体形状を高精度に評価できる機器です。位置度、平行度、直角度、平面度などほぼすべての幾何公差に対応でき、複雑形状部品の検査に最適。高精度部品の測定にも強く、CADとの比較検査も可能です。
【幾何公差の測定】関連機器
ここからは、弊社で扱っている幾何公差の測定が可能な製品を紹介していきます。
IM-8030T(KEYENCE)

非接触で高精度な計測が行える画像寸法測定器。測定範囲は300×200×75mmで、高精度モードでは±2μm、広視野モードでも±3.9μmの精度を実現しており、ノギス以上・マイクロ以下の精度を担保したい場合に最適です。
ライトプローブによる側面測定や回転ユニットによる同軸度測定にも対応でき、平面度や同軸度など幾何公差の測定も可能です。
ザイザックス AXCEL(東京精密)

大型測定物の複数測定も高速かつ安定的に行える高精度三次元測定機(CMM)です。測定範囲は850×1000×600mmと広く、最大約1000kgまでの重量物にも対応。熱変形の影響を受けにくい定盤構造により、温度変化のある環境下でも安定した計測が可能です。測定精度は±1.8μm(条件により±2.3μm)と高精度で、繰り返し精度も±1.5μmと優れています。
CAD比較による形状評価が可能で、自由曲面や三次元形状部品の評価にも適しています。スキャニング測定に強く、幾何公差評価にも最適。大型部品の全数検査や、形状の可視化が必要な現場、自由曲面評価を行いたいケースで特に力を発揮する測定機です。
Smart Scope ZIP(OGP)

高倍率の光学系と非接触レーザー測定を組み合わせたマルチセンサ測定機で、精密部品の幾何測定に適しています。測定範囲は450×450×220mmで、ズーム倍率は29〜150倍。非接触測定では誤差±2μm(条件により最大±1.3μm)と高精度を実現しており、小型部品の精密寸法測定に最適です。
レーザーによる断面測定やタッチプローブによる側面測定にも対応でき、多角的な測定が可能。「幾何公差が測定できない」「薄物が測りにくい」といった課題解決に役立つ製品です。
幾何公差の測定でお困りの場合には
幾何公差は、製品の品質や性能を左右する重要な指標であり、適切な測定方法を選ぶことで、設計意図を正しく反映した製品づくりが可能になります。
なお、精密加工や測定を依頼できる業者をお探しであれば、創業50年以上・取引実績500社以上の「三ツ矢」にぜひご相談ください。
設計・製造・検査を一貫対応する体制を整え、ミクロン単位の高精度加工や特殊技術にも柔軟に対応しています。全国に広がるネットワークを活かし、試作から量産、特殊素材の調達までワンストップでサポートしていますので、お悩みやご相談等ございましたらお気軽にお問い合わせください。
